研究概要 |
【抗先体内部分子抗体による体外受精阻害実験】先体内部分子MN7、MC41、MC101およびMN9(equatorin)の受精における役割を解析するために、これらの分子に対する特異抗体(mMN7,mMC41,mMC101,mMN9)を体外受精培地に添加して受精に対する影響を調べた。その結果、mMN7は先体反応を阻害し、mMC41は精子と透明帯との結合の維持を阻害した(Saxena et al,J Reprod Fertil,1999)。mMN9は精子-卵子細胞膜融合を阻害した(Toshimori et al,Biol Reprod,1998)。mMC101は精子の透明帯の通過を阻害するだけでなく、先体反応時の精子頭部細胞膜の変化を阻害して精子-卵子細胞膜融合に影響を与えている可能性を示した(論文投稿中)。 【先体内部分子と透明帯分子または先体内プロテアーゼとの相互作用】先体内部分子と透明帯分子との相互作用をFar-Western blotting法で調べた。その結果、MN7分子はZP3と結合することが示され、この分子が透明帯との相互作用によって受精に関与する可能性が示された。次に免疫沈降法によって先体内部分子と共沈してくる蛋白成分中のプロテアーゼ活性をザイモグラフィーで調べた。その結果、MC41分子にはセリンプロテアーゼが結合していることが示された。MC41は酸抽出後に中性条件下に移すと加水分解を受けた。これらの結果はMC41が先体から放出された後に、この分子に結合しているプロテアーゼによりプロセッシングを受けることを示唆する。先体のマイクロドメイイン構造は先体の区画化と先体内容物放出の制御に関係していると考えられる(論文準備中)。 【先体形成機構の形態学的研究】細胞内小胞輸送阻害剤ブレフェルジンAを精細管の器官培養に添加したところ、精子細胞のERからゴルジへの輸送、ゴルジから先体への輸送が阻害され、分断化した異常な先体が形成された。これよりコートマー被覆小胞による細胞内小胞輸送が先体形成に主要な役割を担っていることが示された(Tanii et al,J Electron Microsc,1998)。精子形成最終ステップでは先体の容量が減少する。この先体のスリム化にtubulobulbar complexと呼ばれる構造が関係していることを先体特異抗体を用いた免疫電顕により証明した(Tanii et al,Anat Rec,1999)。先体の大きなモルモットを材料に先体形成過程での先体内部抗原MN7の局在変化を調べた。(Yoshinaga et al,Anat Rec,2000)。先体内マイクロドメイン形成は精巣上体内成熟に伴ってさらに進行し、尾部に至って完成した。MN7の最終局在から新しいマイクロドメインが同定された(Yoshinaga et al,Cell Tissue Res,1998)。
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