研究概要 |
ラットの動脈各部の摘出片を用いて伸展刺激を負荷した内皮細胞におけるストレスファイバー(SF)形成とストレスタンパク質(HSP)の合成の様子を蛍光組織学的に検出し,定量的検索を行った。その結果,伸展刺激によるSF形成やHSP(特にHSP70)合成には血管部位によって誘導がかかるものとそうでないものに分かれることが分かった。こうした機械刺激に対する応答性の良し,悪しが実際の内皮細胞機能にどの程度反映されているのかを探る目的で細胞内一酸化窒素(NO)の組織学的検出を試みた。この目的に沿って組織・細胞を固定し,同時にNOの蛍光指示薬である4,5-diaminofluorescein diacetate(DAF-2DA)による蛍光を検出する方法を探った結果,DAF-2DAとアルデヒド系固定剤の組合せが有効であることを見出した。このNO検出系を用いてラット生体や摘出血管床に種々のストレスを負荷した際の内皮細胞におけるNO産生能を調べる実験をスタートさせようとしている。また、伸展刺激に対して誘導形成・発現されるSFとHSPの相互関係についての解析も進められた。細胞骨格成分との関係が報告されているHSP25とHSP90の内皮細胞における伸展刺激による発現誘導性はいずれも小さかった。ところが伸展刺激による内皮細胞におけるHSP70の合成発現をケルセチンで抑えたところ、SF形成も同時に強く抑えられることが判明した。サイトカラシンでアクチン重合を阻止しSF形成を抑えてもHSP70発現は正常であることを考えると,HSP70は血管内皮細胞の伸展刺激によるSF形成において正に分子シャペロンとして本線維形成に必要な蛋白種を会合させるのに大きな役割を果たしていることが推測される。
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