研究概要 |
臨床用の磁気共鳴イメージング法(MRI)(GE Horizen l.5T)を用い,様々なタスクを与えつつ,functional MRIを測定した.撮像方法は(1)大脳全体の活動部位を同定することを目的に,全脳をEPI法で撮る方法,及び(2)撮像面を固定して時間分解能を上げる方法の2種類を行った. Finger-Opposition課題では,左右の一次運動野及び前運動野に明らかな活動が見られ,両者にはコントラストの位相差も観察された.これは両部位の活動に時間的な相関があるためと考えられた. 言語発生課題では,古典的言語野,連合野に活動が見られた.またStutteringを示すグループでは,古典的言語野に明らかな活動が認められず,対側の前帯状回に活動が見られた. ランダムドットステレオグラムの立体視では,平面視した場合に比べて,V2,V3,V5,IPS,STS及び運動言語中枢に統計的に有意な活動の増加が認められた.これは立体視では主にM経路が関与することを示している. また,運動言語中枢の活動は,frequency labeled multiple task(FLMT)法を用いた場合でも,他の課題と干渉することなく,有意に観測された.しかし,単眼立体視では,同部位の活動は認められなかった.以上のことから,運動言語中枢においては,二つの異なるイメージからの距離計算が行われている可能性がある.然しM経路と運動中枢で,位相のずれは観測されず,極めて高速な並列処理が行われているものと考えられる.従って,この時間相関の検出には,現行の機種よりも高感度のMRIを用い,更に高速な画像取り込みが必要であろう. また,我々により独自に開発されたMTC-EPI法を用いて,立体視解析を行い,通常のEPI法と比較した.フィンガータッピングのような運動課題では,MTC-EPIのほうが脳活動に対する感度が有意に高かった.然し立体視による課題では,両測定法で有意な差は現在のところ観測されていない。従ってMTC-EPI法は,活動範囲が狭く局在化した活動に対してより有効であろうと考えられた.
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