研究概要 |
プロラクチン産生(PRL)細胞の増殖を調節するcAMP/protein kinase A(PKA)とインスリン/MAP kinaseの2つの情報伝達系の相互作用を調べ,さらにその作用機構を検討した。 1 MAP kinase cascadeの阻害剤であるPD98059は,PRL細胞の増殖を促進する成長因子であるインスリンの作用を充分に抑制しただけではなく,細胞内のcAMP濃度を増加させるforskolinの最大増殖刺激効果をも抑制した。この結果より,cAMP/PKAの増殖促進作用が発現するためにはMAP kinase cascade活性が必要であることが示唆された。 2 PKAの阻害剤であるH89,KT5720は,forskolinの増殖促進作用を充分に抑制しただけではなく,インスリンの増殖刺激効果をも抑制した。この結果より,インスリン等の成長因子の増殖促進作用の発現にcAMP/PKA系が関与していることが示唆された。 3 PRL細胞中の,活性化された状態であるリン酸化MAP kinase(pMAPK)を特異的抗体で免疫染色した。pMAPK免疫陽性PRL細胞の数はdobutyryl cAMPやforskolinによって増加せず,一方,リン酸化CREB免疫陽性PRL細胞の数はforskolin及びinsulin-like growth factor-1によって増加した。 4 p70S6kの選択的阻害剤であるrapamycin投与は,インスリンあるいはforskolinによるPRL細胞の増殖を抑制した。また,生理学的に重要なPRL細胞の増殖調節因子であるestradiolの増殖促進作用も抑制した。一方,PRL細胞の増殖を抑制するドーパミンアゴニストであるbromocriptine存在下では,rapamycinはインスリンによる増殖は抑制したが,forskolinによる増殖を抑制できなかった。この結果より,インスリン/MAP kinas ecascade及びcAMP/PKA系の2つの増殖調節作用は,p70S6kレベル,あるいはその上流で収斂することが示唆された。
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