研究概要 |
[目的]寒冷・温熱曝露時における皮膚交感神経活動中の血管収縮神経活動が核心温(深部温)としての鼓膜温に与える影響について検討した.[方法]十分説明を行い,承諾を得た成人男女のべ42名を被験者とした.血管収縮性皮膚交感神経活動をタングステン微小電極を利用したマイクロニューログラフィーにより脛骨神経,腓骨神経,あるいは正中神経から記録し,レーザードプラー法による皮膚血流低下により,血管収縮性皮膚交感神経活動を同定した.同時に鼓膜温をサーミスターによって記録し,局所寒冷曝露(手部を冷気に曝露),緩徐全身寒冷曝露(25゜→15℃),局所温熱曝露(40℃の足底部加温),緩徐全身温熱曝露(15°→25℃)時における血管収縮神経活動と鼓膜温変化の量的,時間的な関係について解析した.[結果]寒冷曝露時においては,血管収縮により放熱が低下し,鼓膜温が上昇した.血管収縮神経の賦活化能に優れた被験者ほど,鼓膜温が上昇し,その潜時は相互相関により10分にピークを示した.逆に全身寒冷曝露により鼓膜温が低下する被験者ほど,1分以内に血管収縮神経の賦活化が大きいことが判明した.一方,局所温熱曝露時においては,血管収縮性交感神経低下により熱放散が増加し,鼓膜温が低下したが,血管収縮神経の抑制能に優れた被験者ほど鼓膜温が低下し,その潜時は14分にピークを示した.さらに全身温熱曝露によっても血管拡張により熱放散が増加し鼓膜温は低下したが,その低下率と鼓膜温低下率,低下幅との間に有意な相関を示し,時間的な相関は認められなかったが,量的な関係は維持されていることが判明した.[結論]ヒトにおいて,寒冷・温熱曝露時において体温調節能は,血管収縮神経の賦活化能,抑制能に大きく依存していることが判明し,ヒトの体温調節がフィードフォワード的に行われていることが示唆された.
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