研究概要 |
現在、ラットでは島皮質の前方部が"味覚野"であり、後方部が"内臓感覚野"であると考えられている。しかし、島皮質が味覚及び自律機能にどのように働いているのか明確ではない。本研究は味覚、内臓感覚及び痛覚刺激に対する島皮質ニューロン活動を電気生理学的に調べることにより島皮質における感覚情報の入力様式、応答性、及び局在性等について研究することを目的としている。これまでに(1)4本の味覚神経(鼓索神経、舌咽神経舌枝、舌咽神経咽頭枝及び上喉頭神経)を電気刺激して島皮質ニューロンの応答性と局在性についてニューロンの単一ユニット活動を電気生理学に記録して調べた結果、島皮質の"味覚野"と"内臓感覚野"の中間部の領域のニューロンに舌後方部や咽頭・喉頭領域からの情報が収束する(Hanamori et al.,1997,Brain Res.;Hanamori et al.,1997,Chemical Sens.)こと、(2)舌後方部あるいは咽頭・喉頭領域の味刺激や動脈圧受容器及び化学受容器刺激を行い島皮質ニューロンの活動を電気生理学的に調べた実験により島皮質の中間部領域のニューロンが味覚、動脈圧受容器及び化学受容器刺激に応答する(Hanamori et al.,1998、Brain Res.;Hanamori et al.,1998,J.Neurophysiol.)こと、(3)舌後方部、咽頭・喉頭領域の味覚情報に応答する島皮質ニューロンはtail pinchによる侵害刺激にも応答を示す(Hanamori et al.,1998,J.Neurophysiol.)ことを明らかにした。本研究は島皮質中間部のニューロンが味覚、内臓感覚及び痛覚等の様々な感覚情報を統合していることを示しており、これらの統合された情報が組織学的に示されている扁桃体、視床下部等に送られ情動や自律機能のコントロールに関係する可能性が考えられる。
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