研究概要 |
神経型一酸化窒素合成酵素(neuronal nitric oxide synthase, nNOS)のantisense oligodeoxy nucleotide (ODN)を用いWistar-Kyotoラット(WKY)の孤束核(nucleus tractus solitarius, NTS)でnNOSの発現を遺伝子レベルで抑制し生体内で自然に産生されるNOを分子生物学的に制御し、その時の循環動態の変化を観察した。また、自然発症高血圧ラット(SHR)の高血圧発症のメカニズムを調べるためSHRでも同様の実験を行い、その結果をSHRとWKYで比較検討した。 1.アンチセンスとして5'-CTTCCATGGTATCTGTG-3'、センスとして5'-CACAGATACCATG GAAG-3'、mismatch ODNとして5'-CGTAGTAGGCATACGTA-3'の塩基配列を設計した。 2.nNOSアンチセンスODNを両側NTSへの微量注入し(20 pmole/50 nl, n=7)、平均血圧の変化を観察すると、センス(n=5)およびmismatch ODNs (n=5)と比べ、30分後(p<0.01, p<0.05)、45分後(p<0.01, p<0.05)、60分後(p<0.05, p<0.05)で有意に平均血圧は上昇した。アンチセンスの注入30分後の平均血圧は、注入前と比べ121±6% (mean±SE)へと上昇した。 3.nNOSアンチセンスODNをSHRの両側NTSへの微量注入し(20 pmole/50 nl, n=8)、平均血圧の変化を観察すると、15分後にセンス(p<0.01, n=7)およびmismatch ODN(p<0.01, n=7)と比べ、30分後にmismatch ODN(p<0.05)と比べ有意に平均血圧は上昇した。アンチセンスの注入15分後の平均血圧は、注入前と比べ136±8%(mean±SE)へと上昇した。 4.免疫組織化学的に調べると、アンチセンス注入後のnNOSの発現はNTSで明らかに抑制されており、センスおよびmismatch ODNsの注入後のnNOSの発現は抑制されていなかった。 5.NTSでのnNOSの遺伝子の発現は、血圧・心拍数を調節していることが判明した。SHRにおける血圧上昇反応は、WKYに比べ早く出現し、またその程度が大きかった。これは、SHRのNTSにおけるnNOSの発現量がWKYでの発現量より多いことが関係するかも知れない。
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