Streptozotocin45mg/kgを尾静脈より投与して作成した糖尿病ラットより4〜6週後に心臓を摘出し、細胞内Ca^<2+>くみ出しに重要な役割を果たしているNa^+-Ca^<2+>交換系(NCX)機構に関して検討した。NCXアイソフォームのうち心臓に高く発現しているNCX1の蛋白量およびそのmRNA量をウェスタンブロット法およびノーザンブロット法で測定したところ、蛋白量、mRNAレべルともに糖尿病で有意に減少していた。この減少と関連して、NCX機能低下が単離した心室筋細胞でのNCX電流を測定することにより証明された。糖尿病心筋細胞では細胞外Ca^<2+>濃度を上昇させると著明な拡張期細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が見られたが、これは正常細胞でも細胞外Na^+濃度を減少させてNCX機能を抑制させると認められた。しかし、cyclopiazonic acidでSR機能を止めた状態でも、細胞外Ca^<2+>濃度増加に伴う拡張期細胞内Ca^<2+>濃度上昇の程度は正常・糖尿病細胞間で違いを認めなかった。すなわち糖尿病心筋細胞ではNCX機能低下により、Ca^<2+>過負荷状態になった時にその処理能力を失い、収縮機能に異常を来すものと考えられた。
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