研究概要 |
大腸癌、腺腫内癌、大腸腺腫60症例を用い抗原提示関連分子であるMHC、TAP、HSP72、Calnexin、Grp94の発現変化とHC遺伝子・p53遺伝子を解析した。さらに、大腸癌以外の癌症例で同様の検討をした。用いた症例の一部は、症例報告等で論文として発表した。 1.免疫組織化学的解析:当初用いた抗MHCクラスI抗体と抗TAP抗体は、ホルマリン固定標本・凍結標本・AMeX固定標本いずれでもすべての症例で反応性不良で、各種抗原賦活法も試みたが定量化に適さなかった。後に、反応性良好なMHCクラスI抗体(米国Roswell Park Cancer InstituteのFerrone教授より供与)を用いたところ、正常細胞・腺腫細胞・癌細胞となるにしたがい発現低下を認めた。一方、HSP72、Calnexin.Grp94抗体は、ホルマリン固定標本に対しても反応性良好で、正常細胞・腺腫細胞・癌細胞となるにしたがい発現増強を認めた。これらの関連分子はMHCクラスI抗原発現低下に対する代償性発現増強の可能性が推察された。 2.MHCクラスI分子のmRNA定量化:in situ RT-PCRによるHLA-A,B,C各遺伝子mRNAの解析では、症例間での差異や同一標本上の正常部と病変部での差異も確認出来なかった。大腸癌でのMHCクラスI抗原発現低下には、蛋白合成段階での調節機構の関与が示唆された。 3.p53遺伝子の検討:p53の第6・7・8エクソンに関するPCR-SSCP解析では、正常細胞との差異が無いことよりgerm lineでの異常が示唆された。 4.大腸癌以外の癌症例での検討:MHCクラスI抗原の発現は、上顎癌では発現減少を確認出来たが、食道癌では発現減少を明らかにしえなかった。食道癌多発症例では、正常細胞と癌細胞でp53遺伝子の変異が確認された。肝癌でのLOH解析では、MHCクラスI遺伝子および関連遺伝子が存在する第6染色体短腕にはLOHは検出できなかった。
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