研究概要 |
平成10年度では,ヒト表在リンパ節の樹状細胞(DC)は第I群のCD1a+/CD83-/CD86-immature DC,第II群のCD1a-/CD83+/CD86+ mature IDC,および第III群のCD1a++/CD83++/CD86++ stimulated IDCの三つのグループに分類されること,また,DCの大部分は第I群の未熟DCで,これらを数日間自己リンパ節のT細胞と共に培養すると第II群のIDCに分化・成熟すること,またIL-1やGM-CSFなどの免疫刺激性サイトカイン存在下で培養すると,第III群のstimulated DCに類似すること,などが判明した。これらの結果から,表在リンパ節では常時皮膚より未熟なLC型DCが相当数供給されていること,その大部分はアポトーシスに陥り消滅していること,培養系ではこの成熟阻害がなく,IDCに分化出来るようになること,などが推定された。平成11年度では,腹腔リンパ節ではDCの数は表在リンパ節に比較して著しく少なく,表在リンパ節のような活発なDCの活動は起こっていないことが推定された。また,単球由来DCを用いた実験系で,未熟なLC型な単球由来DC(MoDC)を自己T細胞と培養するとIDCへ分化すること,それに対してアロT細胞と混合培養するとIDCへの分化が阻害されapoptosisに陥って死滅すること,などが明らかとなった。以上より,以下の仮説を提唱する。(1)リンパ節は皮膚などの末梢組織から絶えず相当数の未熟DCの供給を受けているが,このうちIDCに分化・成熟できるものはごく僅かである。(2)T細胞は抗原非特異的な結合を介して未熟DCのIDCへの分化を促進する。(3)抗原特異的T細胞はDCによる抗原刺激を受けるとそのDCの成熟を阻害するように働き,その結果として未熟DCはDCに成熟することなくアポトーシスに陥って消滅する。(4)生体内ではTリンパ球が常時循環することによってこのDC排除機構が働くこと,などである。
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