研究概要 |
動脈硬化における粥腫性硬化巣(プラーク)破裂の分子機構を細胞外マトリックス分解に中心的役割を果すmatrix metalloproteinases(MMPs)に焦点をあて解析し,次の成果を得た。 1.プラークの各領域(線維性被膜,肩領域,脂質コア)で平滑筋細胞,マクロファージともMMP-1,-2,-3,-9を産生していることが免疫組織化学,in situ hybridization,in situ RT-PCRで証明された。潜在型MMP-2の活性化因子であるMT1-MMPmRNAもMMP-2mRNAとほぼ同様の局在を示した。また,強いエラスチン分解活性を有するMMP-7,およびMMP-12の蛋白,mRNAともプラークに発現していた。 2.プラークの肩領域では,主にマクロファージがMMP-1,MMP-2を産生し,MMP-3,MMP-9は平滑筋細胞,マクロファージともほぼ同程度に産生していた。 3.脂質コアではMMP-1は主にマクロファージ,MMP-2,-3,-9は平滑筋細胞,マクロファージとも同程度に産生していた。 4.Film in situ Zymographyでプラークにおいて実際にゼラチンが分解されていることが証明された。特にプラークの肩領域での分解活性が他の領域に比べて高く,マクロファージの産生するMMP-2によることが示された。 以上,本研究によって各種MMPsがプラークを構成する細胞外マトリックスを分解し,プラークの脆弱化を引き起こすことが示された。特にプラーク破裂の好発部位である肩領域では,マクロファージの産生するMMPsが重要な役割を果すことが明らかとなった。今後,マクロファージおよび平滑筋細胞における各種MMPsの遺伝子発現調節機構や活性化機構を解析し,心筋梗塞や脳梗塞の原因となるプラーク破裂の予防に向けての研究を発展させたい。
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