研究概要 |
BCL6遺伝子は悪性リンパ腫でしばしばみられる3q27染色体転座の転座点近傍より単離された遺伝子であり(Science,262,747,1993)、diffuse large cell lymphoma (DLB)の45%、follicular lymphomaの6-13%で遺伝子再構成がみられるところから、転座による活性化がリンパ腫発症に深く関わっていると考えられる。BCL6蛋白質はN末にBTB/POZ domain、C末にzinc finger domainをもつ転写因子である。我々はこの機能を解明する目的で、まずBCL6蛋白質を特異的に認識する抗体を作製し、同蛋白質が92-98KDの核蛋白質でありgerminal center B-cellに特異的に強く発現すること、そしてBCL6蛋白質がリン酸化蛋白質であることを他に先がけて明らかにした(Blood,86,28,1995)。さらに我々はBCL-6をリン酸化するkinaseとしてMAPkinase(ERK1,2)に着目して解析し、MAPKがBCL6をin vitroにみならずin vivoにおいてもよくリン酸化する事、^<32>Pでin vivoラベルしたB-cellから免疫沈降したBCL6蛋白質とMAPKを用いてin vitroでリン酸化したfull length GST-BCL6蛋白質をphospho-peptide mappingによって解析してin vivoとin vitroのmapのspotはほぼ完全に一致すること、BCL6のリン酸化はMAPKK inhibitor PD98059で抑制されること、そしてB細胞内でBCL6とMAPKがcomplexを形成していることを見いだした(Oncogene,14,2465,1997)。さらにBCL6蛋白質がリン酸化される領域はN末のBTBdomainとC末のzinc finger domainの間のセリンとプロリンの豊富な領域であることを見いだしたが、この領域は転写機能にに重要であることが示されていることから、BCL6の転写機能はMAP kinase signaling pathwayによるリン酸化によって制御される可能性が示唆された。
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