研究概要 |
平成10年度において、陽性荷電化単量体ovalbumin(c-OA)を用い、Balb/cマウスの尿細管基底膜上にc-OAと抗OA家兎IgGから成るin situ型免疫複合体を形成させ,さらに、マウスを正常家兎血清にて前免疫する事により、尿細管間質性腎炎を誘導できた。その際、尿細管上皮と傍尿細管周囲毛細血管にはICAM-1とMHC class II分子が発現していることを確認した。平成11年度において、間質性腎炎における尿細管上皮の形質転換(MHC class II, ICAM-1の発現)を誘導するサイトカインには、マクロファージ由来のサィトカイン(IL-1βやTNFα)ではなく、活性化Tリンパ球由来のINF-γが関与することを、in vitroにおける尿細管上皮の単離培養系を用いて証明した。さらにINF-γによりMHC class IIを発現した尿細管上皮細胞がスーパー抗原とともにT細胞を活性化することを確認した。平成12年度では、完成した間質性腎炎のマウス実験モデルを用い、平成11年度に行った単離腎尿細管上皮のフローサイトメトリーによる検索法を応用して、尿細管間質に浸潤する炎症細胞の種類とそのサイトカインの同定、尿細管間質細胞の形質転換との相互関係を経時的に検索したが、'比重分画による分離法、分離された細胞の同定法が確立できず成果が得られなかった。平成13年度には、間質性腎炎の進展過程に関与するサイトカイン、ケモカイン、増殖因子を免疫組織化学とIn situ hybridization法を用いて解析した。早期には、尿細管上皮にMHC class 2,TGF-β1,HSP47分子の発現を認め、後期にはvimentinが陽性を示した。間質には早期からTGF-β1、HSP47,PDGF-A陽性細胞が浸潤し、後期には、αsmooth muscle actin, TGF-β1,HSP47の発現が増強した。In situ hybridizationによる解析では、早期の尿細管間質にIL-1β、TNFα,MCP-1,osteopontinが発現した。以上から、早期の間質内炎症細胞浸潤が尿管上皮ならびに間質細胞の形質転換を誘導し、さらに形質転換した尿細管上皮ならびに間質細胞が間質線維化への準備状態を設定していることが判明した。
|