研究概要 |
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の有機りん剤(OP)感受性低下をもたらす可能性のあるタンパク質多型を,コガタアカイエカの3つの感受性系統,OP抵抗性のToyama,ならびに横浜市の自然集団より新たに採集した蚊を用いて解析した。テストした20個体の野外蚊は全てOP非感受性AChEをホモジニアスにまたはヘテロジニアスに有していた。タンパク質前駆体のみに含まれるシグナルペプチドにはアミノ酸置換多型が殺虫剤感受性に無関係に生じていたが,cDNAから予想されるAChEの成熟ペプチド配列にはタンパク質多型は認められなかった。 Toyama系統と1つの感受性系統の間で戻し交配を行い,得たB1子孫を個体ごとに酵素解析と制限酵素断片長多型(RFLP)解析を行い,ネタイシマカ由来のcDNAクローンとコガタアカイエカ由来のAChE cDNAをプローブとするRFLPをマーカーにして,コガタアカイエカの連鎖群地図を構築した。AChEに有機りん剤非感受性をもたらす遺伝子(AChE^R)は第2染色体上に,AChEの構造遺伝子(Ace)は第1染色体上にマップされた。第2のAce遺伝子座が存在するという証拠が得られなかったことから,AChE^Rは本酵素の殺虫剤感受性を調節することに関わる突然変異である可能性が示唆された。
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