研究概要 |
結核のような細胞内寄生菌感染に対しては細胞性免疫が感染防御に重要な役割を果たす。しかし,病原菌の感染様式により有効な細胞性免疫,すなわち細胞傷害性T細胞(CTL)かまたは1型ヘルパーT(Th1)細胞,は異なる。本研究では,リステリアをモデルとして,CTLかまたはTh1細胞を任意に感作できる指向性DNAワクチンの開発を目指した。 結果:1)細菌感染に対するDNAワクチンの作製にあたっては,コドンを細菌から宿主に適合させることが必要であった。2)DNAワクチンの接種には,遺伝子銃の方が筋注よりも免疫誘導の再現性,少量のDNAで十分な効果を挙げることが出来る点で優れていた。 [CTL誘導型DNAワクチン]1)リステリアの3種のCTLエピトープを用いてCTL誘導型DNAワクチンを作製した。これらのCTL誘導能には差があり,その感染防御能はCTL活性と比例した。2)これらのワクチンははTh細胞非依存性にCTLを誘導できることが分かった。3)誘導されたCTLはIFN-γを産生したが,これは感染防御に関与しなかった。[Th誘導型DNAワクチン]1)リステリアの2種のThエピトープを用いてTh誘導型DNAワクチンを作製した。これらエピトープをli鎖のCLIP領域と置換させ,エピトープを強制的にクラスll分子に結合させることによりTh細胞の感作が可能であった。2)これらのワクチンは抗原特異的な増殖反応を示した。3)これらのワクチンの感染防御能は,CTL誘導型ワクチンに比して弱かった。4)更に強力なワクチンを作製するためには,サイトカインを発現するプラスミドを同時に投与するなどの工夫が必要と考えられ,現在検討中である。
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