研究概要 |
本研究では,ヒト好中球から得られたCAP18(抗菌活性およびLPS中和活性をもつ18kDa)の蛋白の構造と機能との関係を中心に解析してきたが,助成金が交付された期間に得られた成果を以下に概略する。 1.CAP18の活性ドメインはC末端の27残基からなるペプチドであったが,活性維持のためにはNおよびC末端を化学修飾する必要があった。 2.27残基ペプチドでは疎水性アミノ酸の導入により抗菌活性およびLPS中和活性が有意に高まった。 3.18残基のペプチドにおいても,疎水基および親水基(塩基性残基)の導入で活性が高まった。 4.ペプチドのα-ヘリックス構造が活性発現に重要であり,さらに,親水性アミノ酸と疎水性アミノ酸の配列やそれらのバランスが活性を支配していた。 5.緑膿菌感染マウスにおけるエンドトキシンショックが27残基ペプチドで有意にブロックされた。 6.E.coli O157感染マウスに対しても27残基置換体は防御能を示した。 7.置換するアミノ酸の数および種類によって,グラム陰性菌およびグラム陽性菌に対する抗菌活性に違いがみられた。スペクトルが異なるペプチドの合成が可能と思われる。 8.細菌の膜障害(グラム陰性菌では外膜および内膜)を介して抗菌活性が発現される。 9.LPSによる細胞の活性化の最初の段階,すなわち,LPSとLBP(LPS結合蛋白)との結合をCAP18ペプチドが阻害する。 10.CAP18ペプチドは,MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対しても抗菌活性を示した。 セラチア菌に対する抗菌活性は弱かったが,ポリミキシン耐性菌に対しても同じ程度の活性を示した。CAP18の生体防御因子としての意義がさらに高まり,また,エンドトキシンショックや難治性感染症の治療薬としての応用の可能性がさらに高まった。
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