研究概要 |
IL-1の機能の全体像を明らかにする目的で,IL-1α IL-1β,IL-1RaKOマウス及びIL-1α/βダブルKOマウスを作製して,免疫系や神経系でのIL-1の機能について研究を行い,以下のような結果を得た。(1)IL-1βはテルピンによる発熱やグルココルチコイドの分泌に重要な役割を果たしているが,IL-1αはこれらの炎症反応にはあまり関与しないことを明らかにした。(2)アポトーシスを誘導するFasは,IL-1の作用を介して炎症反応を誘導することを明らかにした。(3)BALB/c背景のIL-1RaKOマウスは,ヒトの関節リウマチに類似した自己免疫性の関節炎を自然発症することを明らかとした。(4)HIV-1遺伝子の発現にIL-1とTNF-αが関与することを明らかにし,HIV-1発症にIL-1が関与する可能性が示唆された。5)他の研究室との共同研究により,脳虚血時の神経細胞のアポトーシスやCaspase-2が引き起こす生殖細胞のアポトーシスにIL-1がメディエーターとして作用していることを明らかとした。(6)IL-1βはT細胞依存性の抗体産生に重要な働きをしていることを明らかにした。IL-1βはT細胞上のCD40リガンドとOX40の発現を制御することによって,抗原提示細胞によるT細胞のプライミングを誘導していることが示唆された。一方,IL-αは抗体産生には関与しないことを明らかに。した。(7)IL-1αは接触過敏症反応の誘導に重要な役割を果たしており,特に,感作期において抗原特異的なT細胞の増殖を制御していることを明らかとした。一方,IL-1βはこの反応には関与しないことがわかった。(8)HTLV-1のトランスジェニックやコラーゲン誘導関節炎のモデルマウスにおいて,IL-1を欠損させると,関節炎の発症が抑制されることを明らかにした。
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