研究概要 |
すべての過程が試験管内で観察できることが約束されている胚性幹(ES)細胞を用いて破骨細胞の増殖、分化、維持機構を解析した。 (1)1個のES細胞をストロマ細胞株ST2上にまいて、コロニー形成中に破骨細胞分化誘導を行う培養法を確立し、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ、c-Fms、β2インテグリン、c-Kit、CD31、VE-カドヘリン、Flk-1陽性細胞を検出することで、血液細胞系譜と血管内皮細胞系譜の誘導の時期、相互の位置関係を経時的に検討した。その結果、血液細胞と血管内皮細胞はコロニー中央にともに起源を同じく発生するが、その後、血液細胞は末梢へ分布後、最終分化を開始すること、一方、血管内皮は放射線状に増殖分化することを明らかにし、発生初期における血液細胞形成と血管形成の関係を試験管内で解析できるシステムであることを示した。この実験系を用いて今後様々な分子を添加するだけでそれぞれの分子の時間的、位置的な効果が解析できる。 (2)血液細胞異常をもたらし、その個体は発生初期に致死となるtal-1(-/-),Gata-1(-/-),Gata-2(-/-),Fog(-/-)遺伝子破壊ES細胞株を用いて破骨細胞誘導を行い、GATA-1,FOGは影響しないこと、Tal-1は必須であること、Gata-2(-/-)は初期前駆細胞の頻度を減少させるが、後期の分化には関与しないことを明らかにした。さらに破骨細胞誘導にとってTal-1-->GATA-2-->M-CSF-->ODF/OPGLの順に分子の要求性が変化することも明らかにした。さらに、この実験系を改変することで色素細胞誘導も可能にした。この2細胞系譜をそれぞれ内部コントロールにすることで、実験はさらに精密なものとなった。
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