研究概要 |
マウスV_γ遺伝子は、胎児型V_<γ5>、出産時型V_<γ6>、成熟個体型V_<γ4>とV_<γ7>、いずれも同じJ_<γ1>遺伝子セグメントに再構成する。これらの再構成産物も、Vのgermline型遺伝子も、共に各発生段階にユニークな転写調節を受けるので、調節部位は各V遺伝子自身とその上流に限定でき、上流2kbpのゲノムDNAのシークエンスから、成熟個体型V_<γ4>とV_<γ7>遺伝子上流にETS転写因子の結合部位が特徴的に検出された。更に、マウス胸腺で使用されるETSファミリー転写因子はEts-1,Ets-2,GABPα,Fli-1,Sap-1とPE-1は、成熟個体型V_γ遺伝子を発現する胸腺やハイブリドーマ株で発現が見られたが、胎児期の胸腺と胎児型ハイブリドーマでは発現していなかった。ETSファミリー転写因子は、GAAを認識モチーフの核として、CGGAを認識するGABPα、C/AGGAを認識するEts-1,Ets-2,SAP、及びAGGAを認識するPEA3がある。が、PE-1の認識配列は知られていないので検討した結果、ACCGGAA/TGTであった。更に、CpGのDNAメチル化配列について、メチル化の有無による認識の差を検討したところ、Ets-1,GABPα,PE-1のいずれも、メチル化有りの場合認識せず、メチル化なしの場合認識したのみならず、二本鎖DNAの片方のCpGだけメチル化したヘミメチルDNA二種類のうち一本が認識され、他方が認識されなかった。 CGGAを認識するEts-1,GABPαとPE-1がヘミメチルDNAを読み分けた事は、これらのETS転写因子の特異的発現が、メチル化したDNAをそのDNA複製時に脱メチル化する機構が考察でき、メチル化DNAの遺伝子発現抑制が、これらの転写因子の発現に付随して脱メチル化される可能性を示唆している。こめことは、脱メチルが先行して遺伝子発現が起こるのではなく、ETSファミリー転写因子の出現が先行する事を意味している。
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