研究概要 |
睡眠の道路交通騒音環境への慣れの進行とその程度を,腕時計型体動検出器で求めた終夜体動,および睡眠ポリグラフから求めた入眠潜時と筋電位積分値で検討した. 被験者は健常な21歳の男子学生2名(A,B,C,D)で,各人のべ17夜(曝露10夜,非曝露7夜)の測定を実験室で行った.まず非連続で非騒音曝露4夜,次に連続で騒音曝露環境下10夜と非曝露3夜を測定した.録音再生道路交通騒音は都内環状七号線に面したビジネスホテルの道路側2階の部屋で,22:00から翌朝7:00まで,窓を全開にして終夜録音したものをレベルダウンし,時間経過そのままに終夜曝露した.電極装着後23時就床8時起床とした.睡眠ポリグラフ測定は,睡眠脳波アトラスに従った.筋電位積分値はサンプル周期100Hz,筋電位(μV)を1分間加算して求めた.ACTIWATCH^<(R)>はサンプル周期32Hz,感度0.05g,測定単位1分とし,被験者が自分で非利き腕手首に,実験期間中昼夜継続して装着した.時系列解析は,測定夜序数に対する各指標の回帰分析を行った. 筋電位積分値は4名とも増減傾向を認めなかった.入眠潜時は,被験者Aのみ騒音曝露後の対照3夜で急激な増加を認めた.終夜体動%は,被験者Bのみで有意の減少を認めた.終夜体動%と筋電位積分値にはA,B,Cで有意の相関関係が認められた. 被験者B,C,Dでは,MT期でそれ以外の睡眠段階よりも体動が有意に多かった.被験者A,B,Dは,REM期でそれ以外の睡眠段階よりも体動が有意に多かったが,被験者Cでは逆に有意に少なかった.被験者Dでは3+4期の体動が有意に減少した. 騒音の睡眠影響を把握するために筋電位積分値を使用してきた経験から,終夜体動%は睡眠ポリグラフ指標よりも測定が簡便な指標として有用であると考えられる.なお,結果に個人差が認められ,さらに例数を重ねた検討が必要と思われる.
|