研究概要 |
ラット肝臓から得たミトコンドリアを用いて、ぺンタクロロフェノール(PCP)が酸素消費増加と呼吸調節比低下を生じさせること、これらがカル二チンにより抑制されること、ぺンチレンテトラゾール(PTZ)の作用については同様の効果はないことを認めた(J of UOEH 20:315,1998).一方、LLC-PK1細胞において、カドミウム毒性がN-アセチルシステイン(NAC)により抑制されること(J Pharmacol Exp Therap 287:344,1998)、同細胞においてカドミウムはc-Jun N-terminal kinase(JNK)活性を高めること(Biochem Biphys Res Commun 251:527,1998)、PTZによる脳内c-fos発現がカル二チンにより抑制されること(J Occup Health, in press)、c-fosを欠損した繊維芽細胞ではカドミウムの細胞毒性がむしろ増強されること(Biochem Pharmacol, in press)などを認めた。そこで、c-fos欠損繊維芽細胞について、PCPおよびへキサクロロフェン(HCP)の細胞毒性を検討したが、これらのクロロフェノール化合物の細胞毒性についてc-fosの有無は明らかな影響がなかった。さらに、さまざまな細胞毒性物質の影響伝達経路として近年注目されているmitogen activated protein kinase(MAPK)に属する3つの系(JNK, ERK, p-38)への影響について検討したが、いずれにも明らかな効果を認めなかった。これらより、今回検討したクロロフェノール化合物は、c-Fos, c-Jun系の細胞内情報伝達とは異なる機構によりその毒性を発揮している可能性、またミトコンドリア障害作用についてはカル二チンがその防止能をもつ可能性が考えられた。
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