研究概要 |
花粉症発症には,空中花粉などのアレルゲン曝露が重要な役割を演じている。本研究の目的は,花粉症発症の背景にあるスギ花粉等アレルゲン曝露の意義を解明することである。 富山県内の学童と家族におけるスギ花粉症疫学調査により,花粉症の有病率は,子供の世代で14〜20%,親の世代で17〜34%であり祖父母の世代の3〜9%と比較して有意に高率であることが判明した。このことは,親と子供の世代が,祖父母の世代にはほとんど存在しなかった環境要因に曝露され,アレルギー体質形成など何らかの作用を受けている可能性を示している。地域性の検討では,多くの地域でスギ花粉が最も重要な花粉アレルゲンとして上げられたが,一部地域ではイネ科花粉やナシ花粉アレルゲンなどの重要な役割も認められた。 スギ花粉飛散と曝露条件に関係する要因研究では,数年間のデータ解析等により,気象条件とスギの植物生理学的変動の重要性が定量的に解明された。特に,前年7月の気温と当年2月の気温上昇がスギ花粉飛散の早期化等花粉症曝露条件変化と関連していることが示唆され注目された。 今回は,スギ花粉粒中のアレルゲンCry j 1の定量評価法について基礎的に研究したが,環境基準など目標値を設定する上でも有効な方法と考えられた。今後更に検討し,花粉症発症病因の解明と予防法の確立に寄与して行きたいと考えている。
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