研究概要 |
1.肺組織におけるラクトフェリン陽性細胞の法医病理学的意義 我々は,乳幼児突然死の肺組織内のラクトフェリン陽性細胞の分布を調べた.感染群(7例)と感染不明群(16例)の肺内のラクトフェリン陽性細胞数を定量した.パラフィン組織切片は,抗ヒトラクトフェリン抗体にて染色した.陽性細胞は,左肺上葉と右肺中葉のそれぞれランダムな場所3ケ所について数えた.感染群の肺における白血球のラクトフェリン陽性率(%)は,50.3+__-12.1(最高率70.2%,最低率36.5%)であった.不明群は次の2つの群に分けられた,すなわち第1群(8例)は59.5+__-20.2%(最高率79.7%,最低率39.3%),第2群(8例)は18.4+__-8.1%(最高率26.5%,最低率10.3%)であった.第2群の内2例は,好中球の陽性免疫染色は他の例よりも非常に強かった.そこで,第1群と第2群の2例は感染症,第2群の残り6例は感染ではないと診断した.これらのデータは,乳幼児突然死の肺における好中球のラクトフェリンの発現は,生前の乳幼児の感染マーカーとして有用であることを示唆している. II.肺の内皮細胞におけるフォンビレブランドファクター(vWF)の発現 乳幼児突然死の肺の内皮の傷害のマーカーとしてフォンブレブランドファクター(vWF)の有用性を調べるために,23例の肺組織におけるvWFの発現を抗ヒトvWFモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学(PAP法)にて観察した.感染群の肺は,毛細血管内皮の内皮細胞内のvWFの発現に明らかに上昇が認められた.この結果は,vWF陽性細胞数は,感染における傷害の状態に対応して加減することを示唆している.
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