研究概要 |
1.免疫組織化学による軸索損傷の検討:Neuron-specific enolaseに対する抗体を用いて軸索を染色し,頭部外傷に基づく軸索の早期変化についてさらに検討したところ,報告されたamyloid precursor protein染色と類似した染色性を示し,受傷後1.5時間生存すればその軸索損傷を検出できることを示した。 2.頭部外傷に基づくastrocyte変化の検討:引き続き,glial fibrillary acidic protein(GFAP),S100蛋白,vimentin,laminin,glutamine synthetase(GS)に対する各抗体を用いてastrocyteを染色したところ,GFAPやS100染色によれば,受傷後7日以上生存した例ではreactive astrocyteが,9時間から7日間までの生存例にはastrocyteの腫大像と突起崩壊像がそれぞれ認められ,さらに,受傷後1.5時間以内に死亡した例にもastrocyteの核濃縮像と突起崩壊像が検出されたため,astrocyte変化の検索が頭部外傷の早期診断上有用である可能性が示唆された。vimentinやlaminin染色等によると,何らかの変化を有するastrocyteのみが主として染色された。 3.Oligodendroglia(OG)の動向:Carbonic anhydrase II(CA)とCNPaseに対する各抗体を用いてOGを免疫染色して標本を観察したところ,CNPase染色では対照例にOGが染色されない一方,頭部外傷例では陽性細胞を認め,OGの早期変化を検索する上で有用な方法であることが示唆された。 4.Microglia(MG)の検討:Ricinus Communis agglutinin-1(RCA1)レクチンを用いてMGを染色して観察したところ,受傷後数時間以上生存した頭部外傷例では肥大MGが,受傷後数週間以上生存した例ではfoamy cellが検出され,頭部外傷を受傷してから死亡までの期間を推定するためには有用な手段であることが示唆された。
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