研究概要 |
慢性関節リウマチ罹患滑膜組織の細胞のうち20-50%がTリンパ球であること、滑膜の新生小血管周囲にもTリンパ球が集族していることから慢性関節リウマチの関節の破壊にはTリンパ球の関与が考えられている。我々は、慢性関節リウマチ滑膜組織リンパ球の活性化はテロメラーゼ活性のアップレギュレーションを伴っていること、またテロメラーゼ活性は慢性関節リウマチ関節破壊の重症度と関連することを明らかにした。 さらに我々は、Tリンパ球など滑膜組織のテロメラーゼ活性を阻害し滑膜病変を抑制する戦略の基礎的検討として、テロメラーゼRNA部分(hTR)に対する相補的配列をもつpeptide nucleic acids(PNAs)を用いる方法と、テロメラーゼのcatalytic domain(hTRT)の塩基配列に対するアンチセンスRNA発現ベクターを用いる方法を試みた。 hTRに対する相補的配列をもつpeptide nucleic acids PNAs(センス、アンチセンス)を作成し、E-B virusで不死化したB-リンパ球(テロメラーゼ活性を持つ)の細胞膜処理後に培地に添加し、1〜7日間培養した後テロメラーゼ活性を測定した。これまでにPNA添加によりテロメラーゼ活性に変化は認められなかった。PNAsのBリンパ球への移行効率に問題があると考えられ、今後の検討課題である。 hTRTのアンチセンスRNA発現アデノウイルスベクターを構築しテロメラーゼ活性を持つ癌細胞株、HeLa,Lovo,A549,SW403,VMRC-LCDの各々に感染させ、1〜7日間培養した後、生細胞率、テロメラーゼ活性を測定した。 LoVo,VMRC-LCDにおいては生細胞率の低下を認めたがこれまでにテロメラーゼ活性の有意な低下はみられず、組み換えアデノウイルスの構造上の問題によるものと考えられ、構造の改善が今後の課題である。 次いで内因性抗炎症メディエーターのリポコルチン1を発現するアデノウイルスベクターを構築し、A549細胞に感染させて副腎皮質ホルモンに匹敵するプロスタグランジンE2産生抑制効果効果が得られたため、今後慢性関節リウマチの新しい遺伝子治療戦略としてさらに検討予定である。
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