研究概要 |
HTLV-1レセプターのcell to cellの感染系として、cell fusion-dependent reporter gene activation assayを確立した。この系は、pCAGT7(T7RNA polymerase発現ベクター)とpCAGHTLV-1env(HTLV-1env発現ベクター)を共にトランスフェクションした293T細胞(donor cell)とpT7EMCLuc発現ベクター(T7RNA polymerase存在下でFire fly luciferase蛋白を発現するベクター)をトランスフェクションした細胞(recepient cell)をco-cultureすることにより、もしdonor cellとrecepient cellの間に細胞融合が生じるとluciferaseが活性化されることを利用したものである。このアッセイ系を用いて種々の細胞株との膜融合活性を調べたところ、MT-2やC91/PLなどのHTLV-1感染細胞やHuH-7,MDBKなどの細胞株を除いたほぼ全ての細胞株に膜融合活性が認められた。すなわち、HTLV-1のレセプターはリンパ系の細胞だけでなく上皮系の種々の細胞膜にも存在することが確認された。一方、cell freeの感染系としてVSV pseudotype(VSV-GF-HTLV-1env)を作製した。この系はVSV-GF-HTLV-1env(VSV-G蛋白の遺伝子のかわりにGFP蛋白遺伝子を有し、かつHTLV-1env蛋白を被ったVSVウイルス)が標的細胞に結合・侵入すると、感染細胞内でGFP蛋白を発現することから、その蛍光を蛍光顕微鏡下で観察することにより感染細胞、すなわちHTLV-1レセプターを発現した細胞を同定できる系である。この系を用いて、cell freeのHTLV-1ウイルスは感染効率がcell to cellの感染系に比して低いもののHepG2や293T細胞には効率よく感染することが明らかになった。また、標的細胞を種々のchemical modification(NaIO4,heparinase,heparitinase,phospholipase A2,phospholipaseCなどを用いて)を施した後の感染実験から、HTLV-1レセプターは蛋白ではなくglycosaminoglycanやphospholipidより構成されることが強く示唆された。現在、レセプターを高発現した細胞(HepG2)のcDNAライブラリー発現ベクターとレセプターを発現していない細胞株(HuH7)を用いてHTLV-1レセプター関連分子のexpression cloningを開始している。
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