研究概要 |
HIVのエンベロープV3領域はケモカインレセプターとHIVの相互作用に関与しHIVの感染に重要な役割を果たしている。我々は昨年までにV3に反応する中和モノクローナル抗体(ヒト型化抗体、Cβ1,Rμ5.5,RC25)を家兎に免疫し、その血清中に抗イディオタイプ抗体を誘導した。ビオチン化した中和抗体の抗原エピトープを含むペプチドに対する結合反応の抑制という測定系で抗イディオタイプ抗体活性を測定した。免疫に用いた抗体に対する抗イディオタイプ抗体が最も結合抑制活性は高いが高濃度の抗血清を用いるとある程度の交叉反応性が認められた。抗イディオタイプ抗体を精製し、同じ力価にてマウスを免疫したところ、anti-RC25イディオタイプを免疫したマウスでは他の2種の抗イディオタイプ(anti-0.5β,anti-Rμ5.5)に比較して有意に強い力価の中和抗体が誘導された。一方、これらの中和抗体はHIVがケモカインレセプターと相互作用するV3ループ部分に反応することから、^<125>Iでラベルしたケモカインがそのレセプターに結合する活性への影響を調べた。しかし、抗イディオタイプ抗体にも中和モノクローナル抗体にもケモカインとケモカインレセプターの反応に対する阻害効果は認められなかった。これらのことから、さらにRC25に対する抗イディオタイプ単クローン抗体を10種類作成し、中和抗体の誘導能やケモカインとケモカインレセプターの反応に対する影響を検討した。しかし残念ながらこれまでのところポリクローナルの抗イディオタイプ血清抗体に匹敵する活性を持つモノクローナル抗体は分離できていない。免疫療法やワクチンとして動物レベルでの有用性を調べるためには有効性の高い抗イディオタイプ単クローン抗体がぜひ必要であり今後とも努力を続けるつもりである。
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