研究概要 |
インスリン自己免疫症候群(IAS)は、1970年に平田らが世界で初めて報告した低血糖を主訴とする症候群である(J.Jpn.Diabetes.SOC.13:312,1970)。自己のインスリンに対する高力価の自己抗体(monoclonalとpolyclonalの2種類が存在する)が産生される。いずれも自己のインスリンに対するhigh capacitu-low affinityのインスリン自己抗体である。特異的なHLA拘束性抗原提示も特徴のひとつである。抗体の性質とHLAアリールに強い相関が存在することはいまなお他の自己免疫疾患にみられない特徴である。10-12年度におこなった研究業績を以下にのべる。 1)平田らの最初の報告後、1997年末までの症例報告を医学中央雑誌で文献検索した。1996年末の226名から18名が追加され、244名となった。男性122名と女性132名である。20歳代などの若い症例ではなく、50歳以降の症例に追加がなされた。Graves病合併IAS症例が7症例追加、慢性肝障害でチオラ服用症例が5症例追加、じん麻疹でタチオン服用症例に1症例追加がなされた。1年間に約9人の患者が発生することが推測される。2)IAS患者末梢血リンパ球のうちインスリン反応性T細胞レセプターはVβ6、Vβ8、Vβ20の高頻度usageがみられ、Th2細胞であることが明らかとなった。3)ポルトガル人2名のIAS患者のインスリン抗体のスキャチャード解析とHLA血清学的タイピングとDNAタイピングから、1名はpolyclonalインスリン抗体で、A23/68、B44/55,Cw2/w9,DR4/13,DQ1/4で、DRはDRB1^*0406/1302、他の1名はmonoclonalインスリン抗体でA23/66,B49/51,Cw2/w7,DR4/7,DQ2/7で,DRはDRB1^*0403/0701であった。アルゼンチン在住のIAS女性患者では、A24/25、B44/49、Cw4/-、DR4/7であったが、DR7に対応するアリールは見つからず、DRB1^*0401/^*0403であることが判明した。。以上より、DRB1^*0406保持IAS患者がpoluclonalインスリン自己抗体を産生し、それ以外のDR4アリールではmonoclonalインスリン抗体を産生することは、これまでの我々の報告とそれに基づく仮説を支持するものでる。
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