研究概要 |
【背景】Crohn病(CD)の病因として麻疹ウイルスの関与が最近注目されている。われわれは麻疹ウイルス類似のヒトタンパク(CDX)をCD腸組織よりクローニングすることに成功した。CDXは麻疹ウイルスと共通抗原性を有しており、CDの発症に関与している可能性がある。この仮説を証明するため、われわれは以下のような研究を行った。 【対象と方法】1)CDXに対するmonoclonal抗体を作製し、同抗体によりCD20例、潰瘍性大腸炎(UC)20例、その他の腸炎(non-IBDcolitis)11例、コントロール9例の大腸組織の免疫染色を行った。2)大腸以外のヒト臓器におけるCDXの分布を免疫染色で調べた。3)CDXをGST融合タンパクとして発現させ、Western blotにてCD15例、UC15例、正常15例の血中CDX抗体の有無を調べた。4)CD4例、UC1例、non-IBDcolitis1例の血中よりリンパ球を分離し、CDXによるリンパ球刺激テストを行った。 【結果】1)CDXはCD,UC,non-IBDcolitisの大腸組織中で増加を示した。2)CDXは正常大腸、食道、胃、十二指腸、回腸、肺にも少数認められた。3)Western blotでは全例明らかな陽性バンドを認めなかった。4)リンパ球刺激テストではCD2例、UC,non-IBDcolitis各1例が陽性を示した。 【考察】上記結果より、CDXはCDにのみ認められる物質ではないことが明かとなり、CDの病因に特異的に関与している可能性は否定的と考えられた。しかし、リンパ球刺激テストによりCDの半数、UC,non-IBDcolitis各1例がCDXに陽性反応を示したことより、CDXがこれらの腸炎の発症に関与している可能性が示唆された。今後、コントロールも含めさらに多数例の検討が必要と考えられた。
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