研究概要 |
この2年間の研究によって、培養PnMEC(peripheral nerve microvascular endothelial cell)を用いたin vitroのBNBモデルがほぼ完成した。研究代表者が開発した方法(Kanda T et al. : J Neurosci Res,1997)によって成牛馬尾からPnMECを分離し、これをI型コラーゲンを塗布した孔径0.4μmのculture insert上に培養した。このモデルを用いて、以下の事項が明らかになった。(1)末梢神経血管周細胞は膜抵抗を有意に上昇させることから、BNBにおいては周細胞がバリアー機能の発現に関与している可能性を考えた。BBBの機能維持に星状膠細胞が必須であるのと同様にBNBの機能発現に周細胞が必要であることを明らかにした最初の報告である(Iwasaki T et al. : J Med Dent Sci 1999)。(2)各種炎症性ニューロパチーにおいて病態発現に関与していると考えられている各種サイトカイン(VEGF,IL-1β,TNFα、TGFβ)によって、このBNBモデルの膜抵抗の有意な低下と放射性イヌリンの膜透過性の有意な亢進を確認した。(3)抗GM1モノクロナル抗体はBNBモデルの膜透過性を亢進させ、膜電気抵抗を低下させることを明らかにした(Kanda T et al. : Neurology投稿中)。現在、各種ニューロパチー患者血清を用いた膜透過性実験、および膜透過性を変化させる細胞内シグナルのメカニズムについての研究が進行中である。
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