研究概要 |
[目的]家族性Alzheimer病(AD)ではpresenilin-1(PS1),presenilin-2(PS2)遺伝子点変異の存在が報告されている。本研究では「孤発性ADにおいても、変性神経細胞・活性化グリア細胞の産生するグロースファクター・サイトカインが神経細胞におけるPS1,PS2遺伝子の発現異常を誘導することによって神経細胞死を促進している」との仮説を考案しヒト神経系培養細胞で検討した。[方法]SK-N-SH neuroblastoma,IMR-32 neuroblastoma,differentiated neurons derived from NTera2 teratocarcinoma induced by treatment with retinoic acid(NTera2-N),U-373MG astrocytomaを、完全無血清培地にrecombinant human TNF-α,IL-1β,IFN-γ,IL-10,TGF-β1(100ng/ml each),1mM dibutyryl cyclic AMP(dbcAMP),or 100nM phorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)を添加し48時間培養後に全RNAを抽出・泳動分離し、digoxigeninラベルPS1,PS2遺伝子特異的probeを用いてNorthen blot解析を行った。[結果]全細胞株でサイトカイン未処理条件下でPS1 mRNA(3.0kb),PS2mRNA(2.3kb)の構成的発現を認めた。全細胞株で上記のどのグロースファクター・サイトカイン刺激でもPS1 mRNA発現量は変動しなかった。PS2 mRNA発現量は、SK-N-SHではTNF-α刺激後にコントロールの1.9倍に増加した。NTera2-NではPMA,IL-1β,TGF-β1刺激後にコントロールの0.18,0.47.0.48倍に減少した。U-373MGではIFN-γ刺激後にコントロールの1.9倍に増加し、PMA,IL-1β刺激ではコントロールの0.36,0.45倍に減少した。IMR-32では上記のどのグロースファクター・サイトカイン刺激でもPS2 mRNA発現量は変動しなかった。[結論]本研究ではヒト神経系培養細胞でPS1 mRNA,PS2 mRNAの構成的発現を認めること、PS1 mRNA発現はグロースファクター・サイトカインによる転写制御を受けないこと、PS2 mRNA発現は細胞特異的にグロースファクター・サイトカインによる影響を受けることを証明した。
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