研究概要 |
目的:重症筋無力症(以下MG)は、胸腺に、胸腺過形成(胸腺炎)または胸腺腫などの異常を伴う。我々は、MGの自己抗原であるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)蛋白が、胸腺内、特に、胸腺上皮性細胞に存在し、アポトーシス誘導抗原である、Fasと共存することを報告してきた。nAChR蛋白のアミノ酸配列内には、T細胞エピトープがあるが、Fas蛋白のアミノ酸配列は、それらのエピトープを共有していることを見い出して、国際神経筋学会に発表し(Kawanami S, et al. Muscle & Nerve Supp 7, S122, 1998)、論文は、投稿中である。本研究は、胸腺内細胞構築のどこに、自己免疫のtriggerとなる、nAChR抗原が存在するかを研究し、MGにおける、自己免疫の、発症機構を明らかにすることを目的とした。方法と結果:胸腺内nAChRについては、各種抗体を用いた免疫組織染色を行い、胸腺組織内のnAChR蛋白や、Fas抗原蛋白の存在については、胸腺抽出物を用いた、ECL-Western blotにより検索を続けてきた。さらに、培養胸腺組織細胞におけるnAChRの有無について、同様に研究し、平成12年5月の神経学会総会に発表の予定である。nAChRのsubunitsについて、ヒト横紋筋肉腫の培養細胞系(TE-671)において検討し、RNA分離、cDNA合成、各々のプライマーを用いたreverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)の条件を決定した[Rhabdomyosarcoma cell line (TE-671)におけるアセチルコリン受容体の発現。臨床神経37:1308,1997].これらの実験条件を応用して、平成10年度、本科学研究費補助金により購入させて頂いた、Gene Amp In Situ PCR system 1000を使用し、胸腺組織におけるnAChR遺伝子の発現について、研究を開始した。Biotin標識deoxynucleotideを用い、凍結切片において、In situ PCRを行い、labeled streptavidin-biotin(LSAB)法による、免疫組織染色を応用し、Alkaline phosphataseを発色させることにより、増幅されたnAChR-DNAの検出に成功した。この方法は、多方面の研究に応用が可能であり、MG及び、正常対照の胸腺組織において、研究を続けている。結論:nAChRは、胸腺の上皮性細胞のうち、免疫組織学的には、髄質、皮質の両者に認められたが、In situ PCRによると、subunitにより、その分布を異にすることが推定された。
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