研究概要 |
X染色体優性遺伝を示すCharcot-Marie-Tooth病(CMT病)typeX(CMTX)では,Xq13.1に存在するgapjunction形成蛋白であるconnexin32(Cx32)遺伝子の変異が原因と考えられている.臨床的にはPMP22遺伝子の重複を伴うCMT1A,Po遺伝子異常を伴うCMT1Bまたは原因遺伝子が明らかにされていないCMT2と鑑別するのが困難な場合がある.臨床的,電気生理学的,組織病理学的および分子遺伝学的研究によりCMTXの4発端者と1発端者の家族の計5例のCMTX患者を見出した.4発端者のCx32変異は,Ser26Leu,Leu90Pro,Arg183His,Cys201Tyrであった.このうちLeu90Pro,Cys201Tyrは文献上報告のみられない新しい変異であった.Genotypeがheterozygoteを示す症例が1例,hemizygoteを示す症例が4例であったが,神経学的検査による重症度はheterozygoteにおいて軽症であった.腓腹神経を検索した4例では,大径有髄線維密度の減少が特徴的で,軸索病変が主病変と判断された.末梢神経伝導検査で,運動伝導速度は全例で中等度以上低下していた.感覚神経活動電位誘発不能所見が,最若年である1例を除いて特徴的であった.脳幹聴性誘発電位検査では,検査を行った4例全例でI〜III波間,III〜V波間の潜時の延長が認められ,中枢神経系にも異常が存在すると判断された. 遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(HNPP)としては,臨床型が非典型的な多発性神経障害型を呈した症例を電気生理学的,組織学的および分子遺伝学的に明らかにした.その発端者の両親に神経学的な異常は認められなかったが,電気生理学的および分子遺伝学的に,父親が無症候の異常遺伝子の保因者であることが明らかになった.このような無症候の保因者が認められることがHNPPの特徴の一つであることより,HNPPの有病率の研究では,このような保因者の発見が重要である.
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