研究概要 |
我々は内因性一酸化窒素(NO)が心収縮性および心筋酸素消費量に対して抑制的に作用していることを収縮終期圧容積関係(ESPVR)の解析により明らかにした。一方、外因性NOの陽性変力作用が報告され、過剰なNOの心収縮性に対する作用は未だ確立されていない。本研究ではNOドナー(FK409)とcGMP analogue(8-Br-cGMP)の心収縮性に対する作用を、自律神経遮断後のα-クロラロ―ス麻酔成犬を対象とし、以下の検討を行った。(1)左室容量,(2)冠血流量(CBF),(3)ESPVR(Emax),(4)ECG,(5)左室圧。controlを測定後、FK409をLADの内に投与し、LADのCBFが増加し、ピークに達した時点でEmaxを測定した。モノメチルLアルギニン(L-NMMA)をLADに投与し、同量のFK409の効果を観察した。別の群では8-Br-cGMPをLAD内に投与し、同様の計測を行った。さらに別の群ではcontrolを測定後、塩酸パパベリン(PAP)をLAD内に投与した。FK409と8-Br-cGMPは用量依存性にCBFを増加させ、Emaxを減少させた。1.0μg/kgのFK409によりCBFは平均139%増加し、Emaxは平均17%減少した。150μMの8-Br-cGMPによりCBFは平均94%増加し、Emaxは平均37%減少した。L-NMMA投与後もFK409は用量依存性にCBFを増加させEmaxを減少させたが、Emaxに対する効果は増強された。PAPはCBFを有増加させたが、Emaxには影響がなかった。外因性NOはCBFを増加させるとともに心収縮性を抑制した。8-Br-cGMPも同様の効果を示したことより、NOの作用はcGMPを介すると考えられた。さらに内因性NO抑制下において、外因性NOに対する過剰反応が示唆された。
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