研究概要 |
Leigh脳症患者より得られた線維芽細胞よりtotalDNAを拙出し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)のATP合成酵素蛋白をコードする遺伝子部位(ATP6及びATP8),及びピルビン酸脱水素酵素(PDHC)欠損症においては活性中心であるサブユニットE1の部位のシークエンスを行う.さらに,近年Leigh脳症を伴うチトクロームオキシダーゼ(CCO)欠損症の病因がSURF1遺伝子にあることが明らかにされたので,5例の患者において本遺伝子の変異の有無を検討した.PDHCのE1欠損症患者において,Exon2に214C>T(Arg→Cys)及び262C>A(Arg→Ser)の変異とExon11に4base挿入及び4base欠失の変異が見いだされた.mtDNAの検索において既知の8993T>G変異を6例に,9176T>C変異を2例に見いだされた.またATPase6サブユニットの8653A〉G変異(Thr→A1a)を14例に見いだされた.この変異は正常対照者100例の1例にしか見いだされず,ミトコンドリア病を疑われた他の病型の患者2-3例にも見いだされ,疾患特異性は否定されるが,Leigh脳症と深く関与している事が推定された.さらにmtDNAのL鎖の複製開始部を含む特異的な欠失を1例の患者に認めた.CCO欠損患者のSURF1遺伝子検索の結果,Exon8に779G>T変異(Gly→Val)を2例の患者に,Exon9の881T>A変異(Leu→Glu)と915delGC/insAの変異を1例の患者に見いだされた. 今回の我々の検討において56例のLeigh脳症患者の33例約60%の病因を遺伝しレベルで明らかに出来た.内mtDNA遺伝子変異が40%で核のDNA遺伝子変異は20%であった.Leigh脳症の病因は多様であるが,共通病態としては脳でのエネルギー代謝障害であることを,我々は述べてきた.今回エ不ルギーに直接関与する遺伝子の検索においても変異が見いだされ,これまでの推論をさらに押し進めたものとなった.
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