研究概要 |
CD95(Fas)抗源は血液細胞の生理的アポトーシス細胞死を誘導するシグナルを伝達する分子として同定されたが,lprおよびgldマウスにおける自己免疫様リンパ球増殖症候群がFas,Fasリガンド(FasL)遺伝子異常に起因することが判明したことより,末梢における自己反応性リンパ球や過剰に産生され不用になった成熟リンパ球の排除におけるFas//Fasリガンドシステムによるアポトーシスの重要性が示唆されている.肝脾腫,リンパ節腫大,自己免疫性汎血球減少,高γglobulin血症,TCRαβ陽性CD4陰性CD8陰性T細胞の増加等lpr,gldマウス類似の臨床症状を示す自己免疫リンパ球増殖症候群の3家系4症例においてFas誘導性アポトーシス異常とFas遺伝子変異を解析した.末梢血より単核球及び顆粒球を分離し,PHA活性化T細胞,およびEB virus形質転換B細胞(LCL),顆粒球における抗Fas抗体にて誘導されるアポトーシスを比較検討し,LCLより抽出したRNAをRT-PCRにてFas cDNAを4分画するように設定したプライマーを用い増幅し,そのPCR産物を,Terminator Cycle Sequenxekitを用い塩基配列を検索した.抗Fas抗体を用いた患者由来細胞におけるFas抗原の発現は兄妹例(症例1,2)および症例4では正常であったが,症例3において全く欠如していた.抗Fas抗体により誘導されるアポトーシスは4例とも全く欠如し,患者由来活性化T細胞において抗CD3抗体にて誘導される細胞死も減弱していた.Fas遺伝子異常を解析すると,症例1,2ではintron7のsplicing donorの点突然変異によるexon7-8間に4bpの挿入が認められ,症例3ではexon4欠失のホモ接合体であり,症例4ではdeath domain内1014C-T置換に伴うnonsennse mutationのを認めた.症例1,2,4ではdeath domainを欠く異常Fas抗原によるdominant effectと考えられた.異常遺伝子は症例1,2では母親由来,症例3ではいとこ同士の両親由来であることが判明した.本邦初のFas抗原異常による自己免疫リンパ球増殖症候群を解析しFas抗原の免疫担当細胞のアポトーシスを介し免疫系の恒常性維持に重要な役割を果たすことが再認識された.
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