研究概要 |
Ataxia-telanigiectasia,Bloom症候群の遺伝子レベルでの病因・病態ならびに病因遺伝子の機能について解析し、平成10、11年度の本科学研究により以下の成果を得た。 1)BLM遺伝子は精巣と胸腺で強く発現していた。meiosis、T細胞の分化に関与することが推測される。BS患者の末梢リンパ球ではT細胞リセプターの異常な組み換えの頻度が増加していた。Ig遺伝子のVDJ組み換えは正常由来のリンパ球と同様におこっておりBLM helicaseはVDJ recombinationに直接は関与していないことを明らかにした。 2)BLMのC-末に存在する2つの塩基性アミノ酸クラスターが核移行シグナル(NLS)として働き、BLMが核内で機能することを明かにした。さらに、そのうち遠位の塩基性アミノ酸クラスターに存在するArg(1344)-Ser(1345)-Lys(1346)-Arg(1347)が核移行に必要であることを明らかにした。 3)A-T患者のスクリーニングとしてEBV-transformed lymphoblastsまたはPHAで刺激した末梢リンパ球を用いてWestern blottingによる方法が有用であることを明らかにした。 4)ATMは無刺激のリンパ球ではほとんど発現が認められないがPHAで刺激すると約10倍発現が誘導されてくる。ATMのmRNAレベル、タンパクの安定性は変化がないことより、post-transcriptionalな機構が考えられた。以上の結果は増殖している細胞でATMの発現が増加しており、増殖に関係する一般的なシグナル経路にATMが関与していることを示唆した。 5)A-Tに発生したB細胞リンパ腫の治療法としてALLのプロトコールの半量をもちいるのが、A-Tリンパ腫の薬剤に対する感受性を考慮すると有効な投与量であることを明らかにした。 6)日本人6人のA-T患者のATM変異解析を行いR1917X,W2491R,R2909G,IVS33+2T->A,7883del5の変異を有することを明らかにした。IVS33+2T->A,7883del5の変異は比較的日本人のA-T患者にcommonな変異であった。 7)日本人A-T患者にエクソン内の5319G to Aという新しい変異を同定した。この変異によりsplicingがおこり2つの異常な転写産物が生じることを明らかにした。
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