研究概要 |
グルタル酸尿症2型について、スクリーニングのための化学診断法の開発および分子レベルで病因を解明するため下記の研究を行った。 1)グルタル酸尿症2型を含む有機酸・脂肪酸代謝異常の診断のための尿GC/MS分析自動解析・診断システムを開発した。 2)グルタル酸尿症2型を含む脂肪酸β酸化異常症スクリーニングのためのアシルグリシン安定同位体希釈法を開発した。 3)ETF蛋白発現実験(放射同位体元素によるパルスラベリング-チェイス実験) 今回、ETF蛋白αサブユニット欠損症とβサブユニット欠損症をそれぞれ1例に見いだした。 4)遺伝子解析:グルタル酸尿症2型日本人3症例を解析した。皮膚線維芽細胞を用いてRT-PCRによりETFαおよびβサブユニット遺伝子のcDNAを増幅しdirect sequenceを行った。1例にαサブユニット遺伝子764点変異(G→T,αG255V)が認められた。他1例ではβサブユニット遺伝子488点変異(C→T,βT154M)を見い出した。 5)脂肪酸β酸化能の検討 ^3H-ミリスチン酸、^3H-パルミチン酸の線維芽細胞の取り込みによる脂肪酸β酸化測定法を確立した。本症4例について本検査を行ったところ、新生児期発症がそれぞれ正常の5.3%と8.3%であり、他3例は40.0-68.5%,31.4-36.4%であった。新生児期発症(重症型)ではβ酸化能が著滅し、臨床的重症度は相関した。 6)血液ろ紙を用いた血中遊離脂肪酸の分析法を確立し、本症では炭素鎖長C8,C10:1,C14:1のいずれも増加がみられることがわかった。 まとめ グルタル酸尿症2型のスクリーニング法として尿有機酸分析の自動解析・診断システム、アシルグリシン安定同位体希釈法、血液ろ紙を用いた血中遊離脂肪酸分析法を確立した。 また、放射同位体元素によるパルスラベリング-チェイス実験および遺伝子解析で日本で初めてグルタル酸尿症2型αサブユニット欠損症を、また、世界3例め(2家系目)となるβサブユニット欠損症を固定した。
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