研究概要 |
本研究はG-CSFで動員された末梢血幹細胞をアフェレーシスで効率的に採取し、抗ヒトCD34抗原に対するモノクローナル抗体を用いてCD34陽性細胞を純化して移植術に応用することを目的としている。初年度である平成10年ではG-CSFを健常人に投与し、安全に採取・保存した細胞が白血病等の造血器腫瘍患者において同種移植術に使用できることを確認した.さらに自己免疫疾患に対象を拡大してその有用性を検討した。次に平成11年度では,難治性でステロイド依存性になった若年性関節リュウマチの15才男児に,ステロイド剤からの離脱を目的とし,大量化学療法と抗ヒトリンパ球グロブリンを投与して強力な免疫抑制を行った後,造血幹細胞救済療法を目的としてリンパ球を除いた純化CD34陽性細胞を輸注した.患児の造血機能は移植後約10日で回復しはじめ,2週間で移植前の状態に回復した.感染症等の合併症もなく,1ヵ月後には退院して外来で経過観察となった。移植術後はステロイド剤を投与する必要もなく,問題になっていた低身長はステロイドからの離脱とともに急速に改善している.平成12年度ではこれらのドナーや患者の経過観察を行い,ドナーの安全性を確認し,患者では造血・免疫機能が年単位で維持されていることを確認した. 従来は癌治療にだけ用いられていた造血幹細胞救済療法が、自己免疫疾患でも利用可能であることを示した.純化CD34陽性細胞移植は癌治療だけでなく,自己免疫疾患にも有用な治療法としてさらに研究を進める価値がある.
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