研究概要 |
本研究の目的は、気道炎症、気道障害の一病態である気管支喘息において、上皮特異的作用や臓器障害後の修復因子として注目される細胞増殖因子keratinocyte growth factor(KGF)、hepatocyte growth factor(HGF)の作用およびステロイドとの相互作用に関して、また、acute respiratory distress syndrome(ARDS)や喘息の治療への応用が試みられ、感染防御機能や抗炎症作用として注目されているサーファクタント関連蛋白(SP-A,B,C,D)との相互作用について検討を加えた。平成10年度は研究実施計画に基づき、喘息モデルラットの作製をヤケヒョウヒダニ虫体より部分精製したDer p II抗原を吸入感作と腹腔内投与することにより行った。免疫前後での好酸球数では吸入ラット2例中1例では2.0%から12.2%へ上昇していた。Dot blot法による解析では、腹腔内投与を行ったラット1例と吸入ラット2例中1例に特異的IgG抗体の反応が認められ、感作されていることが確認された。一方、培養胎児肺を用いた実験では、day 14がらの4日間培養において、デキサメサゾン(1〜200nM)で濃度依存性に肺の発達を促進させた。Nothern blot法による解析では、SP-A,B,C,CC-10(気道上皮クララ細胞分泌),KGF,KGF受容体(KGFR),HGF受容体(c-MET)の発現を促進させた。肺の発達におけるスデロイドの作用は、一部KGFを介して肺に作用していると考えられた。平成11年度は、培養液中に加えたレチノイン酸,ビタミンA(all-trans,9-cis retinoic acid)の単独での効果とデキサメサゾンとの相互作用について培養胎児肺でのSP-A,B,CとKGF、HGFの発現をみた。all-trans retinoic acid 10^<-7>〜10^<-5>の濃度において単独では10^<-5>の濃度にて末梢肺胞の軽度の拡張が認められた。デキサメサゾンとの相互作用においてはレチノイン酸は胎生後期における胎児培養肺のデキサメサゾンによる形態学的効果を抑制し、Nothern blot法による解析では、デキサメサゾンによるKGFの増強効果とHGFの減弱効果をさらに強め、SP-A,B,C,CC-10の増強を抑制した。また、予備実験として行ったアスコルビン酸、ビタミンCは臨床的に運動誘発性喘息(EIA)を抑制する可能性が示唆された。
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