研究概要 |
Histidinohydroxylisinonorleucine(HHL)はI型コラーゲンの分子間架橋の1つで,3分子間架橋を架橋する最終産物と考えられている.我々は微量皮膚サンプル中のHHLおよびhydroxyprolineを同時に測定できるシステムを開発し,I型コラーゲン1分子当たりのHHL量を求めることを可能にした.本研究期間に,1)全身性強皮症患者の前腕硬化部皮膚では対照とした正常人の前腕に比べてHHLが約2倍(0.33±0.03 vs 0.15±0.04,P<0.001)に増加していること,2)限局性強皮症の1病型であるモルフェア患者においても,硬化病変部は周囲の正常部位に比べて有意(0.36±0.09 vs 0.28±0.10,P<0.01)にHHL量が増加していることを明らかにした.しかし,モルフェアにおいては硬化部HHL量の変化と罹病期間あるいは組織学的変化の程度との間に相関はなかった. これらの結果は,全身性および限局性強皮症の硬化性線維化病変におけるコラーゲンの質的変化を初めて指摘した研究論文である.これら2疾患の硬化性病変が形成される機序との関連において,我々はHHLの増加がコラーゲン線維間により強固な架橋を付与し,そのために蓄積したコラーゲンが分解されにくくなっているのではないかと考えている. 病的結合織疾患におけるコラーゲン代謝は,その合成と分解の両面から検討必要がある.しかしながら,HHL形成の制御機構は全く不明と言わざるを得ない.現在,三次元培養系真皮モデルを用い,HHL形成に関与する生理的因子(酸素,血清濃度),増殖因子,化学物質を検討中である.予備的実験では,生理的因子(酸素,血清濃度)はHHLに大きな変化を与えないようである.
|