研究概要 |
本研究は,トランスフォーミング成長因子(Transforming Growth Factor-β,TGF-β)皮下投与により誘導される新生マウスの皮膚線維化モデルを用いて,結合組織成長因子(Connective Tissue Growth Factor,CTGF)の役割とTGF-βとの相互作用について,その詳細を検討した。 TGF-β単独投与により誘導される線維化は3日目をピークとして消失するが,TGF-βとCTGFを同時投与するか,あるいはTGF-β3日間投与後にCTGFを投与することにより不可逆的な線維化が形成されることが明らかにされた。 以上の結果から,皮膚の線維化がTGF-βによって誘導され,CTGFによって維持されるという仮説が強く示唆された。そこで,このモデルを用いて抗CTGF中和抗体による線維化の抑制を試みたところ,一部抑制効果が確認され,さらにより中和活性の強い抗体のスクリーニングを試みている。またCTGFアンチセンスの作用についても検討する予定である。 また,全身性強皮症患者の血清CTGF濃度を多数例で検討したところ,正常人に比較して有意な上昇がみられただけでなく,皮膚硬化や肺線維症などの疾患重症度と血清CTGF濃度との相関が認められ,線維化疾患の代表ともいえる全身性強皮症の病因にCTGFが関与していることが示された。 今後我々が確立したTGF-βおよびCTGFによるマウス線維化モデルを用いて,全身性強皮症に対する治療薬のスクリーニングを行い,臨床応用に結びつけたい。
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