研究概要 |
アトピー性皮膚炎の発症機序を明らかにする目的で、本症発症におけるマスト細胞および抗原特異IgEの関与の検討を行った。 1,アトピー性皮膚炎モデルマウスNCの発症におけるダニ抗原特異IgEの関与の検討 コンベンショナル環境下のマウスにしばしばみられるマウスダニに着目し、NCの発症におけるマウスダニ抗原の関与を検討した。NCはマウスダニの感染により高率に皮疹を生じ、血清IgE高値を示した。血清中にダニ抗原特異IgEが検出された。発症したNCの血清からIgEを精製し、BALB/cに静脈内投与した後、ダニ環境下で飼育して皮疹発症の有無を検討した。NCの血清IgEを移入したBALB/cの皮疹は対照群と差がみられなかった。皮疹の発症にダニ抗原が関与しているが、発症における抗原特異IgEの関与は証明できなかった。 2,アトピー性皮膚炎モデルマウスNCの発症におけるマスト細胞の関与の検討 C57BL/6-W^vをNCと13代交配し、W^vを有するNCを得た。このマウスからW^vをホモに有するNCを作製し、ダニ感染による皮疹の発症の有無を検討した。NC-W^v/W^vは、変異を有さないNC-+/+に比し皮膚マスト細胞は著明に減少していたが、ダニ感染により皮疹を生じた。血清IgE値はダニ感染により著明に上昇した。NCの発症にはマスト細胞は必須ではない可能性を示唆している。 3,ヒトアトピー性皮膚炎におけるカンジダ抗原特異IgEの関与の検討 アトピー性皮膚炎患者および対照患者においてカンジダ抗原を用いた皮内テスト、抗原特異IgE値を検討した。皮内テストでは、健常人、アレルギー性鼻炎患者の多くが遅延型反応を示したのに対し、アトピー性皮膚炎患者は多くが即時型反応を示した。カンジダ抗原特異IgEはアトピー性皮膚炎患者90%、健常人5%、アレルギー性鼻炎患者9%がそれぞれ陽性を示した。アトピー性皮膚炎患者の多くはカンジダに対する遅延型反応の低下、即時型過敏症の亢進を示した。
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