研究概要 |
p21WAF1は細胞周期の調節だけでなくゲノムの安定性保持にも関与している.核異型は癌の組織学的特徴のひとつであり,癌細胞におけるゲノムの不安定性を示すものと考えられる.表皮内癌のひとつであるBowen病は,臨床的には悪性度は高くないものの病理組織学的に高度の核異型が特徴である.Bowen病発生にp21WAF1遺伝子異常が関与しているかどうかを検討するためPCR-SSCP法を用いてp21WAF1遺伝子変異の有無を調べた.これまでにBowen病でのp21WAF1遺伝子変異を検討した報告はない. 20例のBowen病のホルマリン固定パラフィン包埋標本から病変部及び正常部のDNAを採取した.次に,p21WAF1遺伝子のアミノ酸をコードする領域を5組のDNAプライマーを用いてPCRで増幅後,SSCPにて変異の有無を調べた.SSCPに異常がみられる場合には,PCR産物の塩基配列を決定した. 20例中4例(5カ所)に正常と病変でSSCPのパターンに違いがみられ,塩基配列の違いも確認した.しかし,いずれもアミノ酸の変化を伴わないものであった(1例,intron 2のposition3;2例,intron 2のposition 16;1例,codon35とintron 2のposition 16).このことはp21WAF1遺伝子変異が,Bowen病発生に関与している可能性は低いことを示唆している.しかし,Bowen病においては突然変異率が高くなっていることを示唆するものと考える
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