研究概要 |
癌治療のメカニズム解明を最終目的として、インターフェロンに代表される癌の免疫療法の効果と密接な関係にあると考えられるアポトーシス等に関する研究を目的に本研究を始めた。その1つのモデルとして、インターフェロンの有効性が確認されているCTCL細胞とその細胞機能の制御因子としてのCD45に焦点をあてた。造血系細胞に高く発現されるチロシン脱燐酸化酵素活性をもつ膜蛋白であるCD45はシグナル伝達物質のチロシン燐酸化を制御することにより,T細胞刺激時の初期シグナルトランスダクションに重要な役割を果たしている。ヒトCD45分子は,5種の異性体より成り,個々のCD45異性体は免疫調節作用及び刺激要求性の違いに応じて多様に発現している。CTCL細胞は、CD45の5種の異性体のうち細胞外のA,B,Cドメインの全てがスプライシングにより消失し、低分子のRO異性体のみを発現するCD4^+ CD45RO^+末梢性リンパ球をその腫瘍細胞とする。CTCL細胞は正常のCD4^+ CD45RO^+ memory helper T細胞とはT細胞受容体(TCR)刺激によるシグナル伝達に関して違いを認めた。更に、CD45を含めた成熟Tリンパ球の全ての形質を発現し、TCR刺激によりIL-2産生能を持つ野生型Jurkat細胞、及び、我々により既に確立したJurkat細胞に5′側第1,2エクソン部のアンチセンスCD45遺伝子を導入したCD45陰性細胞(J-AS)、さらにそのCD45単一異性体遺伝子(CD45[ABC],CD45[O])導入細胞に対して、すべてのリンパ球の機能発現の第1段階となるTCR刺激によるシグナル伝達へのCD45の役割を検討した。これらの同一の細胞背景をもつ遺伝子導入細胞に対し、インターフェロン投与に伴うインターロイキン2(IL-2)産生、細胞のチロシン燐酸化を検討した。IL-2産生,チロシン燐酸化に伴うシグナルに関し,R[ABC],R[O]各異性体特異的な違いを見いだし、SH2,SH3ドメイン等のシグナル伝達に関与するシグナル蛋白質結合モチーフをもつVavおよびGrb2結合蛋白として報告されているSLP-76のチロシン燐酸化が連関してIL-2産生とともにCD45異性体により特異的に制御されることを見いだした。
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