研究概要 |
難治性皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎、強皮症および菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)に対しての紫外線療法、特に長波長紫外線(340-400nm,UVA1)の治療に結びつくことに有用な基礎的、臨床的研究を行うのが本研究の目的である。これらの皮膚疾患はいずれも真皮を主病変とした疾患であり、UVAは真皮深層まで届く点が利点であり、病変部にその作用が及ぶ。皮膚を構成する細胞、角化細胞、線維芽細胞では、治療が用いられる照射量と同じと考えられる30-50J/cm^2では、アポトーシスをほとんど起こさないことが、DNAラダ-法、TUNEL法で明らかとなった。角化細胞では、metallprotease inhiitor存在下でFASLの表面での発現がUVAによって誘導、さらに培養上清には、sFASL(可溶性FASL)が証明された。このsFASLは、FASを表面に大量に持つ活性型T細胞のアポトーシスを起こすことができ、FASLの抗体でその反応を抑制することができた。すなわち、UVA照射によって、角化細胞からsFASLが生じ、皮膚に浸潤する病因と考えられる活性型/悪性T細胞にパラクラインな機序でアポトーシスを起こしうることが示唆された。また線維芽細胞では、UVA照射によって、collagenaseなどのMMP(metallprotease)-1,3の上昇がみられた。これを調節するTIMP-1,3には変化がなかった。すなわち、真皮の線維性病変に有効である可能性が示唆された。フンボルト財団奨学研究員として在独中(1995/4-1997/3)の結果(アトピー性皮膚炎において、UVAが真皮に浸潤したCD4陽性T細胞にアポトーシスを起こし、浸潤T細胞が消失し、治癒することを明らかにした。浸潤T細胞をクローン化し、紫外線によるアポトーシスはT細胞上でのFAS-FASL結合によることも明らかにした)の浸潤T細胞のsuicide,fratricideによる機序、角化細胞のパラクライン機序、そして線維芽細胞のMMPの発現上昇から、皮膚T細胞性リンパ腫、全身性強皮症に臨床応用を試みた。in vitroで得られた結果のように、両疾患とも有効性が認められた。
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