研究概要 |
マウス毛色遺伝子の中でアグチ遺伝子の機能を調べるために,C57BL/10JHir系統のブラックおよびコンジェニック系統のC57BL/10JHir-A/Aのアグチのマウスの皮膚より表皮メラノサイトを初代培養して,その機能を比較した。その結果,アグチでは表皮メラノサイトの増殖活性は変わらなかったが,純粋培養したアグチのメラノサイトはブラックのメラノサイトに対してメラニン生成が減少していた。アグチのメラノサイトでは,ブラックのメラノサイトに比べ成熟した第IV期メラノソームの割合が著しく減少していた。培養液中の黒色メラニンおよび黄色メラニンの前駆体の量にブラックとアグチで差がなかった。これらのことからアグチ遺伝子は,表皮メラノサイトにおける最終的なメラノソームの成熟化に関与していると考えられる。一方,ピンクアイドダイリューション遺伝子の機能を調べるため,C57BL/10JHir-p/pのマウスの皮膚より同様にしてメラノサイトを培養した。ピンクアイドダイリューションのメラノサイトはメラニンの生成がほとんど見られず,ごくわずかの第I〜II期メラノソーム(メラニンの沈着していない)しか見られなかった。ところが,L-チロシンを2mM加えて培養するとメラノソームの新しい形成や,メラニンの沈着した第III〜IV期メラノソームが多く観察され,細胞中の黒色メラニンの量も増加した。また,ピンクアイドダイリューションのメラノサイトはL-チロシンを2mM加えて培養すると,培養液中に黒色メラニンの前駆体を多く放出することがわかった。これらの結果から,ピンクアイドダイリューション遺伝子は,メラノソームの形成やメラニンの生成を阻害し,その機構は黒色メラニンの前駆体のメラノソーム内での保持に関係していることが示唆される。
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