研究概要 |
1.放射線治療を行ったI期末梢型非小細胞肺癌36例を対象として予防的縦隔照射の意義について検討した結果,縦隔照射を行わなかった26例の3年,5年原病生存率は53%,40%で,縦隔照射例10例の生存率64%,39%と同等であった.5年累積局所再発率は28%で,初回再発形式で縦隔リンパ節のみに再発の認められた症例は縦隔照射非施行の1例のみであった.以上から,低肺機能や高齢などで放射線治療の適応となる末梢型早期非小細胞肺癌症例に対する治療法として,肺機能の温存などの観点から所属リンパ節への予防照射は必ずしも必要ないと考えられた.2.胸部X線写真陰性の非小細胞肺癌12例14病巣(扁平上皮癌13,腺癌1)に対する^<192>Irを用いた気管支腔内照射の初期効果と有害事象について検討した.照射法は原則として気管支控内照射を先行し,外照射を併用した.腔内照射の線量は,気管支内径に応じて線源中心から5〜10mmの点で5Gy/回とし,10〜25Gyの照射を行った.治療後の観察期間は最長30か月で,現在のところ局所再発例も重篤な有害事象発生例もみられていない.以上の結果から本法は肺門部早期肺癌に対する標準治療の一つになりうると考えられた.3.肺癌の放射線治療後に^<18>FDG-PETを施行し,^<18>FDGの集積程度と局所再発の有無について検討した結果,^<18>FDG-PETは治療効果判定に有効で,SUV値3を基準値とすると,再発例(SUV平均値±SE:3.8±0.6)と非再発例(平均値±SE:1.1±0,4)のSUV値の間に有意差が認められた.また,効果判定時期は,治療終了から6か月,12か月後が妥当と考えられた.4.生検病理組織標本についてp53蛋白発現の程度と治療成績について検討した結果,p53蛋白発現陰性例の放射線感受性は陽性例にくらべ有意に高く,p53蛋白発現は放射線感受性の先行指標となりうる可能性が示唆された。
|