研究課題/領域番号 |
10670827
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
放射線科学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
南 学 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (10174096)
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研究分担者 |
林 直人 東京大学, 医学部・附属病院・分院, 講師 (10261992)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
1999年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1998年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
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キーワード | 磁気共鳴画像 / 拡散強調画像 / 拡散テンソル / 脳梗塞 |
研究概要 |
<目的>脳梗塞において水拡散は超早期から低下するが、本来水拡散は三次元的に生じており、数学的に3×3行列であるテンソルtensorで表されるべきである。通常一軸のみに運動検出傾斜磁場(motion probing gradient:MPG)を加える拡散強調画像(diffusion weighted imaging:DWI)は、tensorの一軸に対する投影成分のみを画像化したものであり、磁気共鳴装置(magnetic resonance imaging:MRI)固有のx、y、z軸に対する被検体の向きにより、得られる画像情報が変化してしまう。拡散tensorを求めることで、見かけの拡散係数(apparent diffusion coefficient:ADC)を本来の絶対値として扱うことが可能になり、数値により脳組織の可逆性を判定することができるようになることが期待される。また脳および脊髄の白質神経線維においては,ミエリン鞘の細胞膜が水分子の透過を制限するために生じる拡散異方性に変化についても検討する。<方法>使用装置はVarian社製水平型7.05T超伝導MR装置と送受信兼用内径3.08cmのプロトン用円筒型quadrature coilである。Phantomおよび正常ラット(n=8)を用いて拡散tensor測定の最適化した後、大脳半球梗塞ラット(n=10)における梗塞及び非梗塞半球の拡散tensorを求め、ADCおよびFA値を算出した。拡散tensor測定に使用したparameterはTR/TE=3000/40msec、Δ/δ=19/12msec、撮像視野3cm×3cm、matrix256×128、スライス厚2mm、加算回数2回であり、撮像時間は約90分となる。MPGの印加パターンは、(x、y、z)=(0、0、0)(1、0、1)(-1、0、1)(0、1、1)(0、1、-1)(1、1、0)(-1、1、0)である。一軸あたりに加えられたMPGの大きさは6gauss/cmであり、b値は一軸あたり557s/mm^2となる。<結果と考察>phantomではADC=2.10±0.04×10^<-3>mm^2/s、FA=0.060±0.029。健常ラットにおける脳内ADCは右、左の順に、灰白質0.76±0.15、0.73±0.17、白質0.72±0.14、0.74±0.13、基底核0.72±0.12、0.75±0.13×10^<-3>mm^2/s、脳内FAは右、左の順に、灰白質0.38±0.18、0.35±0.16、白質0.52±0.13、0.55±0.15、基底核0.32±0.15、0.37±0.18であった。左側大脳半球梗塞ラットにおける脳内ADCは右、左の順に、灰白質0.73±0.16、0.48±0.21、白質0.75±0.18、0.55±0.19、基底核0.73±0.12、0.44±0.22×10^<-3>mm^2/sと左側における有意な低下がみられた。脳内FAは右、左の順に、灰白質0.36±0.17、0.38±0.18、白質0.51±0.18、0.45±0.22、基底核0.37±0.15、0.35±0.19であり、灰白質及び基底核には明らかな左右差はみられなかったが、白質においては左梗塞半球では右側に比べて、FAは有意に低下しており、細胞構築の違いや虚血に対する反応の違いなどが示唆された。非梗塞半球における各部位のFAには健常ラットのFAと有意差はみられなかった。ラット大脳半球梗塞における拡散tensorを用いた超急性期脳梗塞の評価は神経組織の微小拡散環境を正確に評価することが可能で、今後超急性期梗塞の診断及び治療法の選択に対して大きなインパクトを与えることが期待される。
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