研究概要 |
胸部X線画像を対象として,コンピュータ画像処理によって得られた時系列の差分画像を読影診断支援のために用いることを試みた.すなわち,正常構造部分を過去画像との差分処理によって消去して変化部分を強調描画し,過去画像との比較読影の際の見落としや定量的診断を支援しようとするものである. しかし,異なった時点におけるX線画像撮影時の呼吸位相,体位,X線入射角度などの違いは,正常構造の完全な差分消去を原理的に困難にしている.本研究では,胸部X線画像における背側肋骨陰影と肺内肺血管陰影を弁別し,比較的淡い陰影ではあるが肺血管陰影を位置合わせの対象として差分処理を行うことを試みた.そして,その差分画像を併せて参照することによって,過去画像と現在画像の比較読影の際に経時的な変化に対する診断能が向上することが下記のように確認された. (1)肺内肺血管陰影を位置合わせの対象として差分処理を行うことによって,10mm径程度の小さな変化も強調して描画することが可能であった. (2)読影実験の結果,本法によればsensitivityは10%程度向上し,false-positiveはほとんど変化しなかった.しかし,画像処理アルゴリズムに依存すると思われるfalse-positiveの発生が一部認められた. (3)肋骨陰影など強いコントラスト成分によるアーチファクトが診断能の向上を妨げることはほとんど無かった. (4)AFROC解析の結果などから,本法は胸部X線画像診断を有効に支援することが明らかとなった.
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